えでゅーすぼーど (EduceBoard) (2011-)

 「えでゅーすぼーど(EduceBoard)」は、多様な人々が関わる問題解決場面における効果的な対話的コミュニケーションスキルを育成するための、デスクトップロールプレイングシステムです。

 「対話的コミュニケーション」とは、相手の立場に立って意見を聞き、それに対応するだけでなく、多くの人の思いを踏まえた建設的なコミュニケーション(提案や意見交換)に発展するような共創型の対話を行うコミュニケーションのことをいいます(多田 2006)。多様な人々の声をまとめ、豊かな地域コミュニティを再生する取り組みが行われ、そのようなコミュニティを実現するコミュニケーション技術が注目され始めています。また、災害時に備えて住民が共同で、即興的かつ相互に適切な意思決定を行う力を育成しようとする取り組みもあります。

 問題状況における多様な立場の人々のかかわりと、その人々の心情を踏まえた自己洞察をする教育方法としては、ロールプレイが挙げられます。心理学的な観点から見れば、ロールプレイは、演者の心の内に抑制されていた姿・経験・考え方を役割演技を通して引き出すことで、自発性・創造性を発見・駆動して、問題解決のための洞察を深めるプロセスです。

 ロールプレイは、演技に登場する様々な役柄が考える多様な声(疑問の声、批判の声、感嘆の声)を予測し、それらの声に応えながら対話を構成していく協同参画的コミュニケーションの過程ともいえます。問題状況におけるロールプレイで重要なのは、考えられうる多様な人々の声を自己内に十全に響かせて、その役割を抑制なく演じることです。しかしながら、演者どうしの社会的比較により、問題状況における多様な人々(とくに批判や不規則行動を行うような役割)を演じる上で羞恥が生じ、十分なロールプレイができないことがあります。多様な人々を十全的に演じられるように、参加者間の社会的比較による抑制を解放しつつ、没入してロールプレイに取り組むことのできる学習環境の開発が必要となっています。

 そこで、本研究室では、人形劇の心理的な効果に着目して、人形劇を活用したタンジブルなデスクトップロールプレイングシステムを提案しています。教育実習生の模擬授業を、このデスクトップロールプレイングシステムを使って行うことで、抑制されていた様々な生徒像が円滑に演じられることが分かってきています。

 このシステムは、基本的には写真のような人形をガラステーブル上で協同で操作することができ、その操作と、操作する学習者の発話を記録するものです。この人形には電子回路の入った箱(ARマーカーを底面に貼付)が付けられ、ロータリースイッチを用いて箱の中にあるLEDのスイッチを点灯することができます(赤色・青色の点灯が可能)。これにより、マーカーの動きだけでなく、LEDの発色に応じて各生徒のステータスを記録する(授業であれば、寝ている、ノートを取っている等)ことができます。テーブル下に置いたタブレットPCのカメラとマイクを用いて人形の動きと学習者の発話を記録し、サーバにアップロードする機能を持っています。

 また、記録したロールプレイを振り返るための鳥瞰図的なFlashアニメーションを表示するリフレクション支援ツールを開発しています。人形劇の役割演技に没入していた学習者が、事後に、授業中に起こった発話や振る舞い、それに対応する指導方法や方略を検討するための機能です。下図はその実装したものですが、人形の動きの記録に合わせて表示されているキャラクターが動いたり状態を変化させたりします。また、録音された音声も同時に再生することができます。さらに、タイムラインに対して相互にコメントを付すことも可能になっています。

このプロジェクトは、科学研究費補助事業(学術研究助成基金助成金(若手研究(B))課題番号23700985の助成を受けて進めています。