研究テーマ「学習環境のデザイン」

研究領域は、教育(工)学、学習科学という分野になります。最近普及しつつある、企業や大学のeラーニングや、Nintendo DSやWiiなどの学習ソフトは、この領域の研究の成果が社会で結実しつつある現れでしょう。また、アクティブラーニング用の学習空間をデザインしたり、オープンスペースのオフィス設計をすることで、学生や働く人たちが積極的に知的な対話ができるような場を提供することも増えてきました。でも、まだ私たちは自分たちがどのように知識を習得するのか、それをどう統合的に理解するのか、どう支援すればいいのか、あまりよく分かっていません。また、学校の中だけでなく、家庭や、学校外での学び(地域センター等)についても考えていかなければならない時代になってきました。

この研究室では、人の学びを支援する新しい環境やリソースをデザイン・開発したり、実験・授業実践・調査を通して、学習支援のあり方を研究します。各学生のテーマの設定は2つの方向性があります。

  1. 自分自身のテーマ設定による形式:
    学生自身が持っている問題意識に基づいてテーマ設定をすることが、最も望ましいと考えています。教育・学習・教師支援や、eラーニング、情報教育あるいは教育心理・認知心理とコミュニケーション等に関する問題を取り上げるのであれば、可能な限り受け入れたいと考えています。
  2. 担当教員自身が現在従事している研究プロジェクトに参加する形で進める形式:
    担当教員が行っている研究の一部を分担・発展する形式で進めることも可能です。ただし、細かなテーマは自分自身で設定することを求めます。領域としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 学生が能動的な学習をするための空間デザインに関する研究
    • 情報教育の方法論に関する研究   …など

これらの詳細はリンク先を見てください。学生の問題意識がこれらに近い場合には、プロジェクトに周辺参加しながら、卒業制作のための研究を行うことができる可能性があります。

なお、この分野で大学院進学を考えている人には、担当講師が所属していた大学院生向けのゼミへの参加を推奨します(2009年度は進学希望者2名が参加していました)。

進め方

ゼミの時間は、文献講読と研究発表を半分ずつ行う形で進めます。

  1. 文献講読
    前期は、基本的に学部専門教育でカバーし切れていない内容をフォローアップするために、全員の研究関心の共通基盤となりうる書籍を1つ選び、1章ずつ輪読していきます。後期は、進捗に応じて各研究領域の論文を要約し、発表する形を取ることがあります。毎回1名ずつ発表します。レジュメを作成し、それを棒読みするだけでなく、適宜口頭で補いながら、分かりやすく説明します。 発表に対して、質疑応答を必ず行います。
  2. 研究発表
    ひとりひとりの研究関心の変化、開発・フィールドワークの進捗を率直に報告し、討論を行います。なお、発表を担当しない学生も毎週一言ずつ進捗を報告しなければなりません(この場合はレジュメなど不要)。

これ以外に個別に研究指導をする時間を取ります。目安として月に1回、2時間程度の枠内でインテンシブに行います。こちらから「しましょう」と持ちかけることもありますが、積極的に打ち合わせを依頼することを期待します。

なお、本卒業制作に参加する上では、「心理学A〜C」「教育学A〜C」のいずれか、「社会情報」「認知科学」「教育支援情報システム総論」「教育支援情報システム各論」「学習科学」を履修していること、または同時履修が望ましい。

想定している成果の形式

  1. 卒業論文
    A4版で本文30ページ以上の論文(報告書ではない)。参考文献(Webをのぞく)15本以上を基準。
    企画書レベルではなく、(開発・)評価・実験・調査にもとづく実証的研究を求めます。グループ研究も可ですが、貢献範囲を明確にするとともに、相応の分量の論文執筆が必要です。
  2. 成果発表のプレゼンテーション
    卒業論文中間発表会および最終発表会への参加は必須です。

場合によっては、3月に卒業論文の内容をまとめて、学会発表をすることがあります。

期待している学生像,選考基準

いろいろ書いていますが、あくまで期待像なので、全てを満たす必要はありません。苦手なことは少しずつ慣れて克服・成長しようとする(したいと考えている)人を歓迎します。

  1. 大学4年間の集大成をがんばって残そうと思える人(卒業論文は99%の努力と1%の新規性)。
  2. 教育支援や学習(支援)に強い興味を持ち、問題意識をもっている人。ただし学校教育にテーマを限定しません。4月には、新1年生向けのクラスイベント企画を行います。
  3. 興味のあることを学んだり、意見を求めたり、教育実践などを研究するために、大学の外に出て行ったり、大学の外の人に意見を求めたり、研究会に参加したり見学したり、積極的にしたいと思える人。フィールドワークが想定されますので、礼儀正しく外部の人とコミュニケーションを取れることが大変重要です。
  4. 必要であれば、学内の他の先生に積極的に助言を求めることができる人。なお、ネットワーク情報学部の学際的な性質上、その逆(つまり、望月が担当教員でない学生)も積極的にアドバイスをしたいと考えていますが、その場合は進め方を相談の上決めたいと考えています。
  5. 自分の意見を主張するだけでなく、他の人の話をよく聞き、自分自身を改善していこうと思える人。
  6. 他人の成長に対して関心があり、そのために建設的な意見を出したり、相互貢献しようと思える人。
  7. 授業の時間は、学習や教育に関する基本的な考え方を十分に習得するため、研究相談(進捗報告+ディスカッション)以外に、必要な文献講読をしますので、本や文章(論文など)を読んだり、資料を集めて考えたりすることをいとわない人(いま苦手でも、これから乗り越えようとする人はOKです)。
  8. 授業の延長などをいとわない人。春休み・夏休み中にも、研究相談や輪読を行います。
  9. もちろん、それなりの配慮はしますが、学業と就職活動の両立をしようとがんばれる人。

3年生の参加を積極的に歓迎します

学部3年生でも、興味があれば卒業制作のゼミに参加することができます。文献輪読や、研究関心の発表、レポートの作成などを通して、研究関心を深めることは、4年次の学習・研究の深まりに大きく寄与すると考えています。参加希望者は、気軽に担当講師宛に電子メール等で連絡をしてください。